引き違い戸に見るジャパネスクの謎-引き戸しつらえ編

引き違い戸に見るジャパネスクの謎-引き戸しつらえ編①- (1999年にホームページで紹介したダイジェスト版です。)

現代の住宅における引き戸の魅力とは、間取りの工夫次第で空間の広がりを演出できることです。
最近ではバリアフリーの思想が開口部についても浸透し、それが追い風となって引き戸が再評価されてきている時代です。
ところで左右にスライドさせる引き違い戸、その開き勝手には特別な呼称がないことにお気づきでしたか?

引き違い戸を構成する2枚の戸の配置は、必ず右戸が手前で左戸が奥にありこれが常識となっているからです。なぜこのような引き戸のしつらえが定着したのでしょうか?
これには、日本家屋の発展の歴史とそれを背景に成立した日本独自の作法が深く関わっているようです。
一般に和式の家は鎌倉・室町時代まで遡った武家の書院造がベースとなっているといわれています。現代に慣習として残っているしきたり、つまり作法はそうした武家の住まい方のルールに茶道のわび・さびの思想が影響しあって完成したものです。
襖(ふすま)は寝殿造の「伏す間」が語源であるように、人目を避ける・さえぎるといった役目をもった戸として発展しました。現在の洋風住宅で用いられる引き違い戸はこの流れを組むものだと思われます。
しばしば私たちを悩ますのが上座・下座の定義です。引き違い戸のしつらいにも、こうした思想が反映されているとしたら・・・。