HISTORY

 

創業以来、ユダ木工は常に「上質なドアづくり」に挑戦し続けてきました。職人の高い技術と感性。選び抜かれた銘木。そして何よりも大切にしてきたのは、常に変化する暮らしと向き合う飽くなき探求。それらが私たちのドアづくりを紡いできました。
私たちのドアづくりの歴史は、時代とともに歩み、進化し続ける物語なのです。

 

1924~ 新たな出会いと挑戦の始まり

1924年、湯田建具店として創業した私たちは、日本の伝統的な建具製作の技術と誠実さを礎に、ものづくりの道を歩み始めました。
1951年、私たちの歴史に決定的な転換点が訪れます。聖フランシスコ・ザビエル記念聖堂のエントランスドア制作です。
この時代、私たちは伝統的な日本の建具製作の技術を基盤としながら、同時に西洋の美意識と技術への探求を開始しました。それは単なる模倣ではなく、日本の職人精神と西洋の建築様式の融合への挑戦でした。

1970~ ヨーロピアンドアの誕生

ザビエル記念聖堂の扉を手がけたのをきっかけに16~18世紀のヨーロッパ建築様式を受け継ぐ「ヨーロピアンドアー」シリーズが誕生しました。厳選されたビルマチークを使用し、デザインや素材にこだわったドアを認定する日本高級ドアー協議会の推薦品の認定をうけました。また、枠への気密材の採用により、断熱性・遮音性を備えた機能的な住まいづくりへの第一歩を踏み出しました。

1980~ 世界の銘木との出会い

初のブックカタログの完成と共に、素材選びの新たな挑戦が始まりました。長年使用してきたビルマチークに加え、ロシア(旧ソ連)のシオジ、ニューギニアのソロモンマホガニーなど、世界の銘木を求めて視野を広げました。それぞれの素材が持つ独特の風合いと特性を活かした製品開発に取り組みました。
デザイン面では、立体的な彫刻やフレームデザインにさらなる磨きをかけ、より豊かな表情を持つ装飾ドアへと進化。86年頃からのビルマチーク材の入手困難という課題に直面しながらも、ナラやタモなどを新たに採用し、より持続可能な製品づくりへの転換を図りました。
製品規格では、オーク色、ダークブラウン色、ホワイト色という新しい塗装色を追加。さらに、室内ドアにステンドグラスをモチーフにしたラチスガラスを採用するなど、インテリアとしての存在感も高めていきました。

 

1990~ 多様性への挑戦

「ヨーロピアンドアー」は、19世紀のアールヌーボーの優美さを継承した「ポルトップドアー」として生まれ変わります。
70年代から始まった2×4工法※1の普及に対応するべく、”在来工法からツーバイフォー工法迄”をキャッチコピーに掲げ、様々な建築工法に適応可能な製品開発を進めました。
世界各地から取り寄せた多様なガラスを採用することで、より華やかで個性的なドアの製作が可能となり、お客様の多様なニーズにお応えできるようになりました。
特筆すべきは、室内ドアにおけるイタリア製ステンドグラスの採用です。開閉を頻繁に行う室内ドアには従来のステンドグラス構造では強度が不十分でした。この課題に対し、真鍮フレームをアルミに変更するなど、幾度もの試行錯誤を重ね、美しさと実用性を両立する解決策を見出しました。

※1 アメリカから持ち込まれた工法。
2インチ×4インチの木材を組んで『枠組』をつくり、この枠組に『構造用面材』を接合して頑強な六面体構造を形成する。短い工期で高い耐震性や耐火性を可能とする。当時の日本では革新的な工法となった。

 

1994~ 人にやさしいドアづくり

この時期、住宅の性能に対する要求が高まる中、ユダ木工は防犯性と気密性の向上に注力しました。当初両開き戸でのみ使用されていた ”召し合わせ” を片開き戸にも採用し、ドアの基本性能を大きく向上させました。ペアガラスの採用や靴摺への気密パッキンの使用など、細部にまでこだわった改良を重ねました。
しかし、この時期最も注目すべきは、環境と健康への配慮を重視した製品開発です。
当時、社会問題となっていた内装材の接着剤に含まれるホルムアルデヒドによる健康被害に着目し、いち早くノンホルマリンドアの開発に着手。新たな木材調達ルートを開拓するべく、オーストラリアでの新樹種の視察を実施。その成果として、1997年にはサザンアッシュ材の無垢ドアシリーズ「エデル ポルテ」を発売しました。ノンホルマリンのウレタン塗装を採用することで、人にやさしいドアづくりを実現。1999年には、国産檜を使用した同シリーズの「地檜」を発売し、環境負荷の低減と国産材の活用という新たな価値を提示しました。

 

2000~ 伝統と革新


気密、断熱への取り組みとして玄関ドアの性能試験を導入。欧州の先進技術を積極的に取り入れ、ドイツ製気密ガスケットを標準採用しました。また、断熱靴摺りによって熱橋を防止するなど、省エネルギー性能の向上にも力を注ぎました。

デザイン面では、長年培ってきたヨーロピアンスタイルを基調としながらも、より現代的で洗練された意匠を模索。住宅の外観に自然に溶け込みながらも、存在感を放つシンプルなデザインの開発に着手しました。
室内ドアでは、フラッシュドアの芯材として使用していた欧州パイン材の持つ可能性に着目。この素材を主役に据えた「ユーロパイン室内ドア」を開発しました。低価格でありながら、檜に似た温かみのある風合いが特徴で、当初のクリア仕上げから、カントリー調など多彩なバリエーションへと展開し好評を博しました。
 

2005 ~ 新しい価値観の提案


2005年、新規創造育成事業の一環として防火ドアの開発に着手。安全性と意匠性の両立という課題に挑戦しました。同時期に発売された「ラスティック玄関ドア」では、植物性自然塗料を採用し、使い込むほどに味わいが増す「経年美」という新しい価値観を提案しました。
防火ドアの完成後は、生き節が多く抜け節が少ない欧州アカマツ(パイン)を採用。その後の原材料事情の変化に応じて、より品質の安定した広島県産のヒノキ材へと移行し、地域に根ざした製品づくりを展開しています。
2011年には「MIYAMA桧」を発売し、国産材の新たな可能性を示しました。2013年には木製玄関引戸を開発し、伝統的な和の要素を現代的にアレンジした新しい製品として注目を集めていきます。
 

2024~ 100年の伝統と未来への挑戦

創業100周年を迎え、「MIYAMA桧」を主力に据えながら、電子錠タイプの開発や多彩なカラーバリエーションの展開等によって、それぞれの住まいの個性に寄り添う製品づくりを実現しています。中でも2018年発売の「超断熱玄関ドアシリーズ」は、ユダ木工の技術力の結晶といえます。世界基準の断熱性能、U値=0.82W/㎡kを実現したこの製品は、高断熱、高気密化が進む現代建築においても高い性能が認められています。100年にわたって蓄積された技術と、絶え間ない研究開発の成果です。

2013年には建築家・伊礼智氏との協働で戸袋&網戸付玄関引き戸を発売。この製品は、ユダ木工の技術力と伊礼氏の空間構想が見事に調和した、画期的なプロジェクトとなりました。このプロジェクトはユダ木工にとって、新たな方向性を見出すきっかけとなり、その後の製品開発にも大きな影響を与えています。

2022年には国産材100%への切り替えを達成。中国山地の木材を活用することで、地域の林業振興に貢献しています。企業理念である「森を守り 暮らしに生かし 木とともに生きる」のもと、カーボン・オフセットや再造林支援を通じて、森や里山づくりに積極的に取り組んでいます。

100年の歴史で培った技術と感性を活かしながら、これからの時代に求められる新しい価値の創造に挑戦し続けます。